インドの「カレー」は18世紀に英国に紹介されて評判となったが、香辛料の使用に慣れていない一般的なイギリス人にとって、インド人のように多様な香辛料を使いこなすことは至難の業だった。そこでC&・B社は、あらかじめ複数のスパイスを調合した「カレー粉」を開発し、「C&・Bカレーパウダー」という名称で売り出した。これにより「カレー」は英国の家庭料理として着実に普及した。そして1810年にはオックスフォード英語辞典に「カレーパウダー」の語が登場するに至る。
インドの「カレー」が野菜や豆など様々な食材を用いるのに対して、イギリスの「カレー」は牛肉を使ったものが有名である。これはかつてイギリスの上流家庭で、日曜日に大きなローストビーフを焼く習慣があったためである。その肉を一週間かけて食べるのであるが、それに掛けるソースのひとつとして、あるいは再び温め直して食するために、「カレー」が存在した。
しかし、この習慣が失われた現在では家庭料理としての「カレー」はほぼ廃れた状態であり、食堂の日替わりメニューにときどき登場する程度の存在になっている。
第二次世界大戦後に南アジアからの移民を大量に受け入れたイギリスにはインド料理店がたくさんあり、イギリス発祥のチキンティッカマサラが国民食となるほどの人気を博している。こうした環境が、家庭料理としての「カレー」が廃れた原因のひとつとも言える。
